無垢フローリング・無垢木材・無垢内装材|MOKUZAI.com検索MENU

やさしい木のぬくもり〜足を冷やさない木の秘密〜

木の床は足を冷やさない

 コンクリートの床の上に立っていると体が冷えてしまったり、疲れてしまったりといった経験はありませんか。そこで、木材とコンクリート、ビニールタイル、3種類の床材について時間経過に伴う足の甲の温度変化を測定、温度低下の速度を比較したところコンクリートが一番速く、次いでビニールタイル、木材が最も遅いという結果になりました。室温22℃のときは、材料の大きな差はみられませんが、室温18℃では、その違いが顕著です。
<small>床材料のちがいによる足の甲の温度変化<br>(出展:山本孝他 「木材工業」Vol.22-1P.24,1967)</small>

床材料のちがいによる足の甲の温度変化
(出展:山本孝他 「木材工業」Vol.22-1P.24,1967)

 これは、素材の熱伝導率が関係しています。熱伝導率の数値が小さいほど熱が伝わりにくいことを意味します。例えば、スギの熱伝導率は0.087 W/(m・k )で、同じく1.0W/(m・k )のコンクリートの約12分の1であり、それだけ熱を伝えにくいということになります。
 熱いナベやフライパンの取っ手や柄が鉄では直に握ることはできませんが、木製であれば素手で持つことができるのです。この木材の性質は寒さでも役立てられていて、屋外に面したドアノブなどには木を使用し、冷たさが伝わりにくくしています。

 ところで、なぜ木材は熱伝導率が低いのでしょう。木材を顕微鏡で見てみると、パイプ状の細胞の集合体であることが分かります。この細胞の内側は、私たちの身近な物質の中で最も熱を伝えにくい空気で満たされています。そのため木材の熱伝導率は低いのです。

 気温の低い冬場には触れても肌から熱が奪われず、自分のぬくもりを実感できるため、心地よいと感じるのです。

木の種類によるあたたかさの違い

 実は、「木」の種類によっても、熱伝導率が異なるため、あたたかさも異なります。
 例えば、針葉樹のスギと広葉樹のカリンを、実際に触って比べてみると、断然スギの方があたたかく感じます。物質のあたたかさは熱伝導率に関係し、木材の内部に含まれる空気の量、すなわち比重のちがいによって熱伝導率も異なります。
スギの比重は0.38、カリンの比重は0.65で、スギの方が軽く、それだけ空気を多く含んでいるため熱伝導率が低く、その結果あたたかく感じるわけです。

木材は人体にやさしい

 静岡大学農学部が静岡県木材協同組合連合会の研究委託を受け「コンクリート」「金属」「木」の3種類の巣箱を使い、ネズミの母子を飼育し、その行動を調査する実験を実施しました。すると母ネズミの行動に違いがみられ、木製巣箱の場合ゆったりと授乳していたのに対して、コンクリート・金属製の巣箱では落ち着きがなく授乳もすぐにやめてしまいました。また子ネズミの生育率もコンクリート巣箱の生存率はわずか10%前後、金属製が40%程度、そして木製は85%と巣箱の材質によって大きく開きがでました。このような差を及ぼした最も大きな要因は熱の奪われ方、つまり物質の持つ熱伝導率が関係しているといえるでしょう。
 学生時代にコンクリートの校舎で過ごした方は、冬場に非常に冷えたという印象を持っていると思われます。それは気のせいでもなんでもなく「冷輻射」が原因。気温が下がって壁や窓などの表面温度が低くなり、体温が奪われてしまう現象で、それによって“冷え”を感じたのです。
 先のネズミの巣箱の実験からもわかるように、人を含めすべての生物は体から熱を大量に奪われると、それがストレスとなり、さらに意欲の減退を引き起こしたり、風邪などの病気の原因となったりします。

 では、冷えなければ、どんな材料でもやすらぎを感じるのかというとそうとはいえません。温度を変えたナラ、スギ、ヒノキなどの木材とアクリル、ガラス、アルミニウムなどの人工素材を手の平で60秒間触ったときの“快適感”と“自然感”を測定する感応実験の結果が報告されています。“快適感”の調査では、暖めた材料が快適と感じられた中で、木材以外と冷えた材料は不快に感じるという結果が得られました。また材料の“自然感”では、木材は自然な、木材以外は人工的な印象を与えることがわかりました。さらにガラスやアルミニウムは暖めても人工的な印象のまま、木材は冷やしても自然観が消えないという結果が報告されています。

<small>各材料の印象<br>資料『ヤドカリ君のやさしい住まいさがし』/静岡県木材協同組合連合会発行より 抜粋</small>

各材料の印象
資料『ヤドカリ君のやさしい住まいさがし』/静岡県木材協同組合連合会発行より 抜粋

これらの実験の結果は、木が生物にとってやさしく、最適な素材であることの証明といえるでしょう。