自然がもたらす木目の魅力

同じ木でも異なる表情

 木目を表す言葉は実に豊富です。「はっきりしている」「目が揃っている」「重厚感がある」「あたたかみがある」「目がつまっている」「「スッキリしている」「力強い」などなど。
たとえ同じ木を製材しても、場所によって様々な木目が出てきます。これは自然の材料であることの特長であり大きな魅力です。柾目、板目の挽きかたによる表情の違いをはじめ、心材と辺材で色のグラデーションのある樹種は、色の変化も楽しめます。節があるものとないもの、斑が所々に入ったもの……まるで自然が生み出したアートのようです。

 木目は細胞組織の大きさや形、配列によって生まれます。四季がある温帯や暖帯に生息する木は年輪があり、常に高温な熱帯の木ははっきりした年輪がないというのが定説ですが、例外があるのが木の面白いところ。
 例えば熱帯雨林の木材でも、インドネシアのスンカイ(学名Peronema canescens)には、タモに似た年輪があります。これは乾季と雨季の環境の違いから生じるものです。このように、熱帯とひとくくりに言っても、気温の変化が少ない地域もあれば、高地で朝と夕では温暖の差が大きい地域もあるなど、条件は一定ではありません。温帯や暖帯も同様です。
それゆえ、同じ樹種でも木目に変化が生じ、さらに強度など性質にも差違が生まれるに至ります。地域や土壌や気象条件、周囲の環境による日照条件などの違い、ときとしては虫の発生が木目にも影響することもあります。熱帯の樹木の中には何年かの周期で花が咲き、年輪にその跡を残す樹木もあり、様々な条件が複合的に絡み合って木の表情が形成されます。

ケヤキ 玉杢

ナラ 虎斑

屋久杉

性質を知れば、木目もわかる

 ヒノキやスギといった針葉樹の柾目は、真直ぐで整然とした美しさがあります。そのような木目となる理由としては、おしなべて針葉樹が広葉樹に比べて幹がまっすぐに生長するということと、細胞組織の90%以上が木を支える骨格と水を通す道管の役割を一人二役の形で果たす仮道管で占められていて、細胞の構成自体も単純な上、配列もキチンとしていることがあげられます。そしてぐんぐん生長する春から夏にかけての早材は、細胞一つの径が大きく、細胞壁が薄いので色が薄く見え、秋以降の生長が緩慢な時期の晩材は細胞の径が小さく詰まっているので色が濃く見え、その結果年輪も明確になります。

 一方広葉樹は、組織が道管と木繊維とに分化されていて、血管と筋肉のように別々の役割を持っています。針葉樹と広葉樹の性質や表情が異なるのはこのためです。
木繊維の間に道管が散らばっている広葉樹は、樹種によってその並び方が異なります。大別すると、ケヤキやクリ、オークなどの年輪にそって並ぶ環孔材と、カリンやメープル、ウォールナットなど全体に一様に散らばっている散孔材、ブナに見られるような直径方向に並んだ放射孔材に分類することができ、それぞれにユニークな木目を形成します。  
  道管や木部繊維がどのように走行しているかも、木目には影響します。走行が傾斜していれば斜走木理といって木目が斜めになりますし、旋回しているものは螺旋木理となります。ナラ材によく表れる虎の縞柄のような虎斑や、またトチノキやカキノキに見られるさざ波を思わせるリップルマークは、放射組織の配列から出来るものです。

 ただし、広葉樹だからといってすべてが複雑な木目というわけではありません。平坦な土地に生育し真直ぐに育った木は、まっすぐな木目になります。木目は重さ強度の材質とも密接な関係にあります。針葉樹は早材と晩材の比重の差が大きいため、木目が細かな材ほど重く、強度も強い材となります。
 逆に広葉樹の環孔材は、木目が狭いと早材にある大きな道管の数が占める割合が多くなるため、木目が広い方が重く、強度のある材となります。  

針葉樹の木目 (ヒノキ)

広葉樹の木目 (環孔材:オーク)

広葉樹の木目 (散孔材:メープル)
 そして木目は塗装と合わせて考えると、より可能性が広がります。たとえば環孔材は、晩材が塗料をより吸い込むため木目が浮き立ち、強い表情になります。意匠に活かす場合は問題ありませんが、全体で見たときにほかとのバランスがとれない場合は一工夫必要で、早材の色合いに近い薄い色かグレー色を晩材にワイピングすれば、落着いた表情になります。
また、早材を黒や白色でワイピングする杢目出しの塗装を施してもまた、ちがった表情を楽しむことができます。  

 ほかの材料では得られない、何十年何百年とかけてつくられた木目を適材適所に採り入れれることで、様々な表情を楽しむことが出来ます。

ウレタン白着色茶杢目出し塗装