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繊維飽和点

乾燥が大切な理由

 乾燥工程は木材の水分を調整するのに欠かせません。屋外で自然の力を借りる自然乾燥と、乾燥機の中で湿度や温度を調整しながら行う人工乾燥とがありますが、いずれも木の含水率を調整し、材料としての精度を上げていくことが目的です。
 なぜ乾燥が重要な工程なのか、ポイントをおさらいしてみます。

・ 施工後の乾燥収縮にともなう狂いや割れを未然に防ぐ
・ 強度が高まる      
・ 変色菌や防腐菌などの木材害虫・害菌の発生を防止する
・ 重量が減り、輸送しやすく、施工時の取扱いが楽になる
・ 接着などの加工性が高まると同時に、塗料ののりもよくなる

 乾燥することで上記のような特性が高まり、品質が安定します。さらに、乾燥の途中で内部割れを起こしたものや変色したものは取り除かれますから、一定のレベルに達した材料を提供できることにもつながります。逆に、もしきちんと乾燥しきれていない木材を使った場合には、狂いや割れが生じやすくなったり、本来木材が発揮できるはずの強度が活かせないというデメリットが生じることになります。
 ところで、同じ大きさの同じ樹種の木材を手に取ったとき、一見、重い方が強いと感じるかも知れませんが、これまでの説明でおわかりのように、重さが強さにつながるわけではありません。乾燥工程を経て水分が抜かれた軽い木材の方が、強度は増しているのです。

境は繊維飽和点

 木材の水分は細胞壁内にある結合水と、細胞内膣(ないこう)や細胞壁と細胞壁の間にある自由水に分かれていて、乾燥工程においては自由水から蒸発し始めます。
 自由水が完全に消失したときの含水率は多くの樹種において約30%で、この状態を「繊維飽和点」といいます。繊維飽和点に達するまでは、どれだけ自由水が蒸発しても木材の性質には変化は現れません。細胞壁内に閉じこめられた結合水が蒸発し始めた時点から、木材の性質は変わっていきます。結合水がなくなった分だけ収縮し、さらに曲げ強度や圧縮強度にも変化が起こり始めます。ただし、製材した木材を乾燥する工程においては、全体の含水率が繊維飽和点以上であっても表面の含水率が繊維飽和点を下まわり表面の収縮力で全体が少し縮まり始めることもあります。
強度と含水率の関係

強度と含水率の関係


 結合水は文字通り、木材としっかり結びついています。木の研究者は、この状態を様々にたとえています。細胞壁を布袋に見立てて、袋の中の水を自由水、布にしみこんだ水を結合水としてみると、袋を逆さまにすれば自由水はすぐになくなるけれども、結合水はなかなか出ていかないというたとえもあれば、細胞壁をスポンジ状のバケツにたとえる人もいます。みなさんが想像しやすいたとえで、木が乾燥するプロセスを頭に描いてみて下さい。

 ちなみに繊維飽和点は英語のFiber Saturation Pointを直訳したもので、そのため専門書にはF.S.Pと略されていることもあります。繊維飽和点という言葉自体を、施工の現場や設計において使うことは稀かも知れません。ですが木材の特性を理解して材料の長所を発揮させるためにはぜひ知っておいていただきたいキーワードのひとつです。
■用語解説
繊維飽和点(F.S.P)・・・生材を乾燥するとまず自由水が失われ、次いで結合水が失われる。その過程で自由水をまったく含まず、最大の結合水を含む状態があり、それを繊維飽和点と呼ぶ。含水率は樹種によらず、おおよそ28〜30%である