オリーブといえば、オリーブオイルや食用の実の瓶詰、オリンピックの葉冠が有名です。シンボルツリーや庭木などでも知られており比較的身近に感じることができる樹ですが、実はフローリングとしても充分な特性を備えていることをご存知でしょうか?
今回はオリーブフローリングの魅力をお伝えいたします。
画像1: オリーブの木(写真素材-フォトライブラリー)
オリーブ(学名:Olbaum、Olea europaea)は、高さ5~10メートルに成長するモクセイ科の常緑小高木*です。樹齢は1000年を超えるものも多く、地中海沿岸地域では樹齢4000年を超えると推定されるオリーブの木に、今もなお毎年のように実が成っています。現在、世界最古のオリーブと考えられているのはクレタ島の「Olive tree of Valves」と呼ばれる木で、樹齢5000年近くと推測され幹の周囲は20メートルもあります。
また、オリーブは、南フランスやスペイン、イタリア、ギリシャなどの地中海沿岸地域では、旧石器時代の地層から化石が発見されていることから、1万年くらい前には自生していたと考えられています。ギリシャのサントリーニ島では、5万年前とされる葉の化石も発掘されており、オリーブは最も長く生きてきた植物の一つです。野生種自体は有史以前から小アジアや北アフリカに自生していたものが、ギリシャ全体に広がり、紀元前8世紀ごろから地中海の植民地開発に伴い、イタリアにも伝えられたと言われています。
*小高木:樹高が5メートル程度~10メートル未満となる樹木
地中海沿岸地域では、古代ギリシャ時代からオリーブは「神聖な樹木」として崇められており、ギリシャ神話や旧約聖書などのさまざまな場面に登場します。ここでは代表的なものをいくつかご紹介いたします。
・「オリンピックの葉冠」
ギリシャ神話の英雄ヘラクレスは、オリーブの樹を北極の伝説的民族より許可を得て樹木の生えないオリュンピアへ持ち帰り、ゼウスの神殿の側に植えさせました。その後、ヘラクレスは兄弟を集め徒競走をし、勝者にオリーブの枝で作った冠を与えました。それ以来、オリーブの冠は平和なスポーツ競技での勝利に対するシンボルとされ、古代オリンピック(オリュンピア大祭)においては、勝者の印として、オリーブの枝で作られた冠が授与されたと言われています。<ギリシャ神話>・「アテネの守護神」
アテネの主導権を巡り、知恵の女神アテナと海の神ポセイドンが争った時、人々により多くの恵を与えたものが勝者となることになりました。ポセイドンは、人々に泉を贈り、アテナは泉のほとりにオリーブの木を植えました。オリーブは食糧・身体の手入れ・治療に使えるとして、人々に実質的な利益を与えたと評価され、女神アテナが勝者としてアテネの守護神となったとされています。<ギリシャ神話>・「平和と安全のシンボル」
オリーブの枝は鳩とともに自由と希望を意味します。神が起こした大洪水の際、ノアの箱舟から放たれた鳩がオリーブの枝を持って帰ってきたことから大洪水が引いたと言われています。この神話により、オリーブは平和と安全のシンボルということから、国際連合の旗や、いくつかの国の国旗や国章でその葉が使われることになりました。<旧約聖書>
オリーブの栽培の歴史は6000年以上も遡ると言われており、最も古い栽培の歴史を有する農作物の一つと言われています。現在では、生産国のうち98%が地中海に面しており、その3分の2はヨーロッパで、生産量が1位の国はスペイン**です。日本へは、安土桃山時代に宣教師によって渡来したとされています。明治時代末期に香川県の小豆島で初めて栽培に成功したことをきっかけに、今では全国で栽培されるようになりました。
オリーブの生育には日照時間の確保が重要で、年間2000時間以上の日照時間が必要とされています。また、根は浅根性があり、地中に深く伸びるのではなく、地表近くに広く浅く張ることで水分の調達力を高めています。根が浅いことから強風などで倒れることも多いため、間隔は8~10メートル程空けなければならず、オリーブの栽培には日照のよい広大な土地を必要とします。このように生育のためにはさまざまな条件をクリアしなければいけないオリーブですが、現在でも世界のオリーブ耕地面積の9割はこの伝統的な植樹法で栽培されています。
**FAO(Food and Agriculture Organization of the United Nations), 2018年
身近なところでは、皆様ご存知のオリーブオイルや果実を漬け込んだ瓶詰などの食品がなじみ深いですが、オリーブの木の中に含まれる成分には抗菌作用があるため、木材としてもまな板やスプーンなどキッチンまわりに使用されます。また、木材としてのオリーブの表情は、年輪が同心円状でないため、不規則な美しい縞模様が入ります。複雑で哲学的な模様をしている様は、その時々の気候に呼応して厳しい環境の中を生き抜いた歴史が刻まれているのです。その木目の美しさから、家具や化粧材、細工物にも多く使われてきました。
イタリアでは、オリーブの木は1本ずつ政府や自治体によって厳重に管理され、勝手に伐採することはもちろん、加工も限られた人々の手でしか行えません。また、フローリングの原料となる木は樹齢100年を超えるものが多く、枯れてしまったり何らかの理由で倒れてしまったりした場合や、健康的に育成するために必要な枝打ちをした部分に限りそれらを材料にすることが可能であるため、非常に貴重なものとなります。さらにオリーブはねじれながら曲がりくねって育つため、長尺材の確保が非常に難しいです。よって、そのようなオリーブ材から作られるフローリングは、大変貴重なものなのです。
オリーブをマルホンでは、上品にヘリンボーンで張ることができる無垢フローリングとしてご用意しています。堅さも十分で傷もつきにくく、油分を多く含むため汚れにも強く、水回りなどでも使用しやすいのが特徴です。その独特なマーブル模様は他の樹種ではみられないため、住宅のみならず店舗などさまざまなインテリアに活かすことができます。
ヨーロッパの歴史と文化に深いかかわりを持ち、自家不和合性***があるため同一個体では結実が難しい木であり、異なる個体の組み合わせが必要となる為「夫婦の樹」と呼ばれ、また、先に述べたように非常に長寿であることから「生命の樹」とも呼ばれているオリーブ。オリーブオイルや瓶詰だけでなく、非常に希少価値の高い木材としての魅力に触れていただき、「ヨーロッパの粋」を取り入れてみてはいかがでしょうか?
***自家不和合性(じかふわごうせい、英語:self-incompatibility, SI):被子植物において、ある個体の正常に発育した花粉が同じ個体の正常な柱頭に受粉しても受精に至らないこと
画像5:オリーブ ヘリンボーン 無垢フローリング施工例
【参考文献】
横山淳一・松生恒夫・鈴木俊久(2018)『オリーブのすべて』幸書房.
フランシス・ケアリー(2016)『樹木の文化史』柊風舎.
浅井治海(2006)『森と樹木と人間の物語』フロンティア出版.
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