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NO.688 コト編

2016.02.03 | 無垢材の特徴 膨張収縮

無垢材の「動き」はなぜ起こる?ー「動き」と上手に付き合うにはー

はじめに

「動き」があるけれど、内装材として本当に使えるのか?」といったお問い合わせをいただく機会が多い無垢材。自然素材への関心が高まりつつある昨今ですが、無垢材は「動く」ので使いにくいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

確かに、無垢材は「動く」という少々厄介な性質を持っています。十分に対策を施した性質の良い無垢材であっても、冷暖房の発達した現代住宅の過乾燥状態では「動く」場合があります。また、自然素材のため材質が均質ではなく、その「動き」が部位によって異なる可能性もあります。
これこそが無垢材が一枚板たる証でもあるのですが、「動く」ということを聞くと不安に思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、この「動き」は、適切な対策を取ることによって日常生活に差し支えない程度に抑えることができるのです。また、無垢材の肌触りの良さや、無垢材が室内の湿度をコントロールしてくれることなどは体験してみないとわかりません。長い目で見れば、健康面や快適さといった点で、その不安以上の効果をもたらしてくれるものなのです。
今号では、無垢材が「動く」とは一体どういうことなのか、また、「動き」と上手に付き合っていくにはどうすればいいのか、といった疑問を解消していきます。

なぜ無垢材は「動く」のか?

●「動く」ってどういうこと?

無垢材は調湿作用(空気中の水分を調整する作用)を持ち、湿気を吸い込んだり吐き出したりすることによって膨張あるいは収縮しています。このような作用が常にはたらいているため、環境によって含水率が上下し、大きさや形が変化するのです。こうした変化が、反りや曲がり、ねじれ等、木の「動き」として現れます。

▼無垢材の調湿作用と膨張収縮について、詳しくはこちら。
ムシムシした湿気を吸ってくれる?!無垢木材の調湿作用と膨張収縮【637 号】
http://www.mokuzai.com/ma_di-28-2

●「動き」の法則とその理由
無垢材はどの方向に対しても同じ比率で収縮するわけではありません。樹木の幹の方向である繊維方向、丸太の断面から見た半径方向と接線方向の3方向(図1)で「動き」の度合いが異なり、その比率は繊維方向:半径方向:接線方向でおよそ0.5:5:10となっています。(図2)このような収縮率の差が、木材の「動き」が目立つ原因の一つとなります。

図1 木材組織と名称
図2 木材の含水率と収縮率(出典:愛媛県庁/木材利用推進マニュアル)

 

このような「動き」の差が生じる理由は、木材の組織にあります。調湿作用により木材内部に取り込まれた水分が繊維に吸着すると木材は膨張し、脱着すると収縮します。その際、木の幹と平行方向にある繊維が、縦に伸び縮みするわけではなく、横に膨らんだりしぼんだりするため、繊維方向よりも接線方向の「動き」が大きくなるのです。また、半径方向と接線方向で収縮率が異なるのにも理由があります。樹木は、春から夏にかけて成長した「早材」と呼ばれる部分と、夏から秋にかけて成長した「晩材」と呼ばれる部分で年輪を形成していますが、この「早材」と「晩材」は異なる特徴を持っています。

 「早材」は一つ一つの細胞は大きいのですが密度が低く、逆に「晩材」は一つ一つの細胞自体は小さいものの密度が高くなっています。(図3)
つまり、「晩材」は細胞内の隙間がより少なく、その分繊維がより多くなっているため、「早材」よりも「動き」が大きくなります。「早材」と「晩材」の「動き」の総計が全体の「動き」として現れるため、「早材」と「晩材」が交互に存在する半径方向よりも、全長にわたって「晩材」が存在する接線方向の方が「動き」が大きくなるのです。

図3 早材と晩材 (出典:愛媛県庁/木材利用推進マニュアル)

「動き」はどう対策すべき?

●対策①乾燥

「動き」を最小限にするために最も有効な方法が乾燥です。乾燥によって長さ・厚さ方向ともに含水率のムラをなくし、「動き」の原因となる内部の応力を残らないようにすることができるからです。木材には最も材が安定するといわれている含水率(平衡含水率)があり、その含水率まで乾燥させることが、木材の「動き」を抑制するために重要となります。

▼平衡含水率について、詳細はこちら。
平衡含水率

また、乾燥による効果は、それだけではありません。材の強度を高めたり、変色菌や腐朽菌の発生を防止したりする効果も持ち合わせているため、無垢材を安心して使用するためには欠かせない工程でもあるのです。方法としては天然乾燥と人工乾燥の二種類に大別されますが、乾燥させる木材の性質を考慮し、適切な乾燥方法を選択することが大切です。
天然乾燥には、丸太の状態で乾燥させる方法と製材後に乾燥させる方法があります。メリットは費用が少なくて済むこと、十分に乾燥すれば収縮率が小さく含水率のムラがなくなること、デメリットは乾燥に時間がかかることです。一方、人工乾燥には高温乾燥や蒸気式乾燥、真空乾燥などの様々な方法があります。メリットは天然乾燥で起きやすい割れなどの損傷を防ぎ、天然乾燥では到達できない所定の含水率まで乾燥できること、デメリットは設備が必要なためコストがかかることです。
ただ、この人工乾燥により7~8%まで含水率を下げられた木材は、そのまますぐに加工を進めてゆくと、形になった後で逆に湿気を吸って動いてしまうことがあります。当社ではそれに対処するため、そのような木材を温度湿度共に管理された状況に一定期間置き、完成後の品質の安定性を高めています。(写真1)これには“イコライジング”、“コンディショニング”と呼ばれる2つの工程があり、乾燥の最後に行います。“イコライジング”は、乾燥室内で仕上がり程度にバラつきのできた材料間の含水率を均一化すること、“コンディショニング”は乾燥応力の緩和を目的に行われます。乾燥後に応力が残っていると表面を削った際に反りが生じ、寸法が変化してくるのですが、こうした乾燥後のトラブルはこの工程により減らすことができます。
弊社の工場では、乾燥室内もしくは専用のコンディショニングルームを使って調湿作業を行い、規定の含水率に仕上げています。含水率に不備があれば出荷を差し止め、弊社が指定する含水率になるまでこの工程を繰り返しているのです。

写真1 コンディショニングルーム

適切な乾燥方法を選択するためには、その樹種に向いている乾燥方法を知る必要があります。例えば、スギは水分の少ない白い辺材(丸太の外側)の部分から乾燥していき、赤みのある心材(丸太の内側)の部分に水分が残りやすいため、材の内側から水分を飛ばすことのできる高周波乾燥という方法を用いることがあります。高周波乾燥とは、40℃程度の低温の環境で、電気を作用させることにより材の中から水分を押し出す乾燥方法なのですが、低温のためダメージを受けやすい節の部分の欠けが少ないことや、材と材の間に鉄板を敷いて積んでいくため、桟積み(風の通るよう、間隔を空けて桟木を置いた上に木材を並べ、何段にも重ねること)での乾燥だと桟の跡が残りやすいスギであっても跡が残りにくいことから、スギに向いている乾燥方法だと言えるでしょう。このように、それぞれの樹種の特徴に適した乾燥方法を選び、使い分けることも重要なポイントです。

 

●対策②

熱処理他にも、弊社でおこなっている対策のひとつに熱処理が挙げられます。これは、無垢材に水と熱のみを用いて特殊な高温処理を施すことによって寸法安定性を飛躍的に高める技術です。

▼熱処理について、詳細はこちら。
熱処理材

 

この処理を施すことによって、未処理材よりも平衡含水率を低く保つことができるため、寸法安定性が向上するのです。
全ての材に施しているわけではありませんが、木の動きが特に心配な方は、熱処理を施した材を選んでいただければ、湿度や温度差が激しい環境でも比較的安心してご使用いただくことができます。

▼熱処理材はこちら。(下記の商品は熱処理を施した商品の一部となります。)
バーチ[熱処理] 無垢フローリング 130mm巾
アッシュ[熱処理] 無垢フローリング 150mm巾

 

●対策③

スペーサー乾燥や熱処理といった対策は、無垢材の動きをできるだけ小さくするために行うのですが、無垢材が動いてしまってもトラブルが起きないようにするためには施工方法にも工夫が必要です。

 

 通常、無垢材は左右に実(さね)とよばれる凹凸の加工があり、それをブロックのように組み合わせて施工をしています。その際にポイントとなるのは、材と材の間にスペーサーとよばれる薄い板のようなものを挟み、あえて隙間を作ることです。(図4、図5)

688_07_1.jpg
弊社の場合、厚み0.5mmのスペーサーを長手方向にのみ使用していただくようにお願いしているのですが、これにも理由があります。前述の通り、木材の収縮率は方向によって異なり、繊維方向よりも接線方向の方が約20倍「動き」が大きくなります。無垢材は、材の長さ方向が樹木の繊維方向、巾方向が接線方向となるように製材しています。つまり、長さ方向には大きく動かないのですが、巾方向に大きく動いてしまうため、長手方向にのみスペーサーを入れる必要があるのです。(図5)

688_08_1.jpg

また、樹種や環境によって膨張収縮の程度は異なるのですが、寸法の変化は含水率の変化、膨張収縮係数、板幅さえわかっていれば簡単に求めることができます。スペーサーのサイズが合っていないと隙間が大きく目立ってしまったり、反りや割れなどのトラブルにつながったりするため、こうした寸法の変化に対応しうる厚みのスペーサーを使用する必要があります。弊社では様々な樹種の寸法の変化を考慮したうえで、0.5mmのスペーサーを推奨しています。

以上のとおり、木の特性を知ることで、「動き」をある程度抑制することができます。しかし、木材は伐採され、製材した後も呼吸を続けるため、全く動かないということはありません。それは無垢材が「生きている」という証でもあるのです。無垢材の「動き」に過敏になりすぎず、寛容な気持ちで自然素材と上手に付き合っていくことが、住みやすい環境を育む一助となるのです。

 

 

<参考文献>
高橋昌巳.“丸太1本を料理する!!木取り法入門”.建築知識[別冊]設計の基本とディティール 木のデザイン図鑑.
株式会社建築知識、1996、p115-118、(木材なるほど百科、4).
江原幸壱.“現場用語がら学ぶ木材のクセと使い分け”.建築知識[別冊]設計の基本とディティール 木のデザイン図鑑.
株式会社建築知識、1996、p119-121、(木材なるほど百科、5).
江原幸壱.“狂いを出さない木材の乾燥ノウハウ”.建築知識[別冊]設計の基本とディティール 木のデザイン図鑑.
株式会社建築知識、1996、p138-143、(木材なるほど百科、10).
石山央樹.“木とながくつきあう②木材と水分、膨張・収縮”.
http://www.jia-tokai.org/sibu/architect/2013/07/ki.html
愛媛県庁.“木材利用推進マニュアル/第4章 木材の特性について”.
http://www.pref.ehime.jp/h35700/1461/3_rinsan/pwindex.html

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