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はじめに

日本人にとって、木材は古くから身近な存在です。森林に恵まれた日本では、家や生活道具のほか、船や社寺仏閣、燃料など、生活のさまざまな場所や用途で木が用いられてきました。「鈴木」「六本木」のように、今なお「木」の付く人名や地名を目にすることからも、その身近さが良く分かります。しかし近代化に伴い、身の回りの多くのものが木材から工業製品に取って代わりました。そしてそのことによって、かつて当たり前のように身近にあった木材の魅力に改めて気付かされることになるのです。
近年、無垢材の魅力が見直され、住宅だけでなく、飲食店や宿泊施設、保育園、幼稚園、高齢者施設などにも木材が使われるようになっています。今号では、多くの人が集まる公共・商業施設等に焦点を当て、無垢材を使うべき理由をご紹介していきます。

公共・商業施設等と無垢材の歴史

お城や社寺仏閣には、木材がふんだんに使われてきました。世界最古の木造建築として有名な法隆寺もそのうちの1つです。1300年を超えても現存する法隆寺が、木材の高い耐久性を実証しています。法隆寺に限らず、当時の建築では、柱や梁には長くまっすぐ育つヒノキ、土台には堅く強度のあるクリなど、各樹種の性質を活かし適材適所に使用されていました。その後、社寺仏閣だけなく公共・商業施設等にも長く木材が使われてきましたが、戦後、燃えやすい木造建築が敬遠されたため、RC(鉄筋コンクリート)造や鉄骨造へと変化していきました。
それでも、建物の主要な構造部材を除けば、戦後復興時の木材の需要は依然として高かったこともあり、また、価格も高騰したことによって、内装材においても代わりとなる素材が求められるようになります。そこで、より低コストで加工が簡単な合板やシートフローリングなどの「新建材」が登場し、無垢材の使用が減少しました。
しかし1990年代以降、「シックハウス症候群」と総称される、住宅に由来する健康被害が顕在化し、問題視されるようになりました。原因物質のひとつは、新建材にも多く使用される接着剤や塗料などに含まれるホルムアルデヒド(英:Formaldehyde)などのVOC(揮発性有機化合物、英:Volatile Organic Compounds)であるとされています。健康的な生活を送るために、自然素材である無垢材の有用性が見直されたのです。
現在は、戦後に植林を行ったスギやヒノキ、マツといった国産材が伐期*を迎えています。しかし、和室や木造建築の減少により国内の木材は余り、良材までもがバイオマス発電用の木質ペレット**となってしまっています。林野庁では、2005年に「木づかい運動」を掲げるなど、建造物への木材利用を推進しました。無垢材を使用することは、より快適な住空間を得ることのみならず、持続的な森林管理の実現にも通じているのです。*伐期:木を伐採して収穫する時期のこと。
**木質ペレット:木材を乾燥、圧縮成形した木質燃料のこと。

■生理的・心理的効果

社寺仏閣やログハウスなど、無垢材がふんだんに使われている空間で、どこか安らぎや落ち着くような感覚を得たことはありませんか。木材には、人に心地良さをもたらしてくれる特徴が多数備わっています。
多数の人が集まる公共・商業空間は、当然、人にとって心地良い空間であることが求められます。心地良さが求められる空間に無垢材を使うべきメリットをご紹介します。無垢材は、目で見るだけでも心地良さを感じると言われています。
例えば、木の年輪の間隔には、規則的なようでいて不規則な「1/fゆらぎ」というリズムがあると言われています。炎のゆらめきや星の瞬きにも認められているこのリズムによって、人の感覚は心地良く刺激されるのです。
また、木材に反射した光は、目にやさしいことが知られています。近頃は採光を大きく取った大開口の空間も多く見受けられますが、日当たりの良い空間は、一見快適そうでありながら、実は目に負担がかかるという側面もあります。それは、太陽の光に有害な紫外線が含まれているからです。しかし、無垢材の使用は、光が反射する際に有害な紫外線を吸収し、目にやさしい光に変えるのです。また、ビニールクロスやコンクリートで囲まれた空間では、音が反響してしまい、残響音によって音が聞き取りづらくなってしまうことがあります。しかし木材は、人が不快に感じる高音域や低音域の雑音を適度に吸収してくれるため、音をまろやかにします。この特徴を活かして、音の響きが重視される劇場やコンサートホールには、しばしば無垢材が使用されています。さらに、目を閉じて木材、大理石、タイル、ステンレスに触れた際の比較実験*を行ったところ、木材に触れた際には副交感神経活動が上昇し、生理的にリラックスすることが明らかになりました。飲食店のテーブルや、保育施設の腰壁など、触れる部分に無垢材を使うことで、触覚からも心地良さを感じてもらうことができるでしょう。

*出典:池井晴美,宮崎良文「第4回木に手で触れると」『木と人の関係―サイエンスの観点から―』

 

■環境面における影響

木材は持続可能な資源です。育っていく過程ではCO2を蓄え、O2を排出します。伐採後にはCO2を蓄えたまま内装材に使用されます。適切に木材を使用することは、森林の適切な管理に繋がるため、木材利用は地球温暖化防止のサイクルの一つとも言えます。一方で違法伐採の問題があります。本質的に木材を利用することで地球温暖化防止に寄与するためには合法木材や、流通ルートがしっかりと担保された木材のみを扱うことが必要なのです。そうであればこそ、世界の人々の生活支援にも繋がる「エシカル消費*」や、SDGs**の目標のひとつとして挙げられている「12.つかう責任、つくる責任」「15.陸の豊かさも守ろう」の達成にもつながります。一般住宅よりも大規模であり、より多くの資源が使用される公共・商業施設等は、不特定多数の人々が利用します。そのような場所に無垢材を使用することにより、木についての関心、自然への親しみ、森林や環境問題に対する考えを育むといった「木育***」にも繋がります。

*エシカル消費:人や社会・環境に配慮した消費行動のこと。
** SDGs:持続可能な開発目標(英: Sustainable Development Goals: SDGs)。持続可能な開発のために、2015年の国連総会にて採択された目標のこと。17のゴールと169のターゲットが設定されている。
***木育:「木とふれあい、木に学び、木と生きる」取り組みのこと。2004年9月に北海道庁により発足された新しい教育概念。

■教育面における影響

国土の7割以上を森林が占めている日本。数は少なくなりつつありますが、木造住宅や木製の家具、日用品は依然として身近な存在です。また、土砂崩れや洪水などといった自然災害への対策のため、森林を知り、保護することは日本人にとっての変わらぬ課題です。
森や山から離れ、都市に住む子どもたちが多くなっている現代においては、都会においても木材に触れることのできる空間を作ることが非常に重要です。上述の「木育」という言葉があるように、子どもの頃から身近に木のある生活を送ることで、木に親しみを持ち、人と木や森との関わり、木の良さや木材利用の意義を感じ、木材や森林の重要性の学びに繋がります。

公共・商業施設等の内装に使用する無垢材の選び方

公共・商業施設等に無垢材を使用する場合には、木の堅さと塗装の種類が選ぶ上でのポイントとなります。
まずは堅さについてご紹介します。多くの公共・商業施設等は、住宅のように靴を脱ぐことはなく、土足使用です。そこで無垢フローリングを使用する場合は、当然ながら住宅以上の耐久性が求められます。ピンヒールやキャスターなどに耐え得る、オークやタモなどのような堅さのある広葉樹がお薦めです。反対に、壁や天井、手すりなど、手に触れるような場所では、床ほどに傷ができることを心配する必要はありません。スギやヒノキなどの柔らかい針葉樹を使うことで、触れた際にあたたかみを感じることができます。

続いては塗装の種類についてです。利用者が多いということは、当然、傷や汚れのリスクが高くなります。無垢材を汚れや傷から保護する役割として欠かせない塗装は、使用場所や目的によって適切なものを選択してください。
無垢材ならではの自然な質感を活かしたい場合には、植物オイルや蜜蝋樹脂ワックスなどの浸透性塗料による塗装をお薦めします。傷や汚れがついても削って補修することができるので、いざという時にも安心です。一方、飲食を伴う施設や、定期的な消毒作業を必要とする施設でのご使用の場合、耐汚染性に優れたコーティング系塗装がお勧めです。また、無垢材の自然な質感と汚れにくさを兼ね備えた高機能塗料のご用意もございます。

▼塗装の種類とその選び方
https://www.mokuzai.com/MailMagazine/30

公共・商業施設等と一括りにしても、規模や用途はさまざまです。樹種、堅さ、塗装の種類は、それぞれの施設ごとに適切なものをお選びください。

公共・商業施設等でのご採用例

■宿泊施設

重歩行でも十分ご使用いただける堅さをもつヨーロピアンオークの無垢フローリングを、ホテルのカフェテリア・イベントルームにご採用いただきました。無垢材の質感を活かしたオイル塗装です。
オイルや蜜蝋などの浸透性塗料を施した無垢材は、傷や汚れが付いてしまった場合も削ってメンテナンスすることができるので、張り替えることなく長くご使用いただけます。

画像:ヨーロピアンオークの導入事例

画像提供:六甲山サイレンスリゾート
https://rokkosansilence-resort.com/

 

 

■展示施設

東京都が運営する国産材の魅力発信拠点に、多摩産のスギ、ヒノキを用いた、特注の無垢フローリングをご採用いただきました。あわせて、FSC®️認証を取得した国産のナラ無垢フローリングもご採用いただきました。
FSC®️認証とは、持続可能な森林活用・保全を目的として誕生した、「適切な森林管理」を認証する国際的な制度です。認証を受けた森林からの生産品による製品にはFSC®️ロゴマークを付与できます。公共・商業施設等のコンセプトに合わせて、使用する樹種のほか、加工や塗装も自由にお選びいただくことが可能です。

画像:国産ナラ、スギ、ヒノキの導入事例1

画像:国産ナラ、スギ、ヒノキの導入事例2

画像:国産ナラ、スギ、ヒノキの導入事例2

画像提供:リビングデザインセンターOZONE「国産木材の魅力発信拠点 MOCTION」
https://moction.jp/

このように、公共・商業施設等に無垢材をご使用いただくことで、屋内にいても自然を感じられ、人が自然と集まるような空間づくりが可能です。多くの人が集まる公共・商業施設等にこそ、無垢材を使ってみてはいかがでしょうか。

 

【参考文献】
山下晃功,原知子(2008)『木育のすすめ』海青社.
山泰子,西川栄明(2008)『木育の本』北海道新聞社.
有馬孝禮(1998)『木材は環境と健康を守る』産調出版.
小原二郎(2003)『木の文化』NHKbooks.
山田正編(1987)『木質環境の科学』海青社.
林野庁『科学的データによる木材・木造建築物のQ&A』,[online] https://www.rinya.maff.go.jp/j/mokusan/attach/pdf/handbook-24.pdf(参照2021-12-01)
林野庁『木づかい普及啓発テキスト』,[online](参照2021-12-01) https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/attach/pdf/top-3.pdf(参照2021-12-01)
林野庁『地球温暖化防止に向けて』,[online] https://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/ondanka/index.html(参照2021-12-01)
木育普及委員会,[online] https://mokuiku-hiroshima.jp/(参照2021-12-01)
RAN’『守られなかった約束』,[online] https://www.ran.org/wp-content/uploads/2018/11/BrokenPromises_20181112_jp_web.pdf(参照2021-12-01)
木育.jp,[online] http://www.mokuiku.jp/(参照2021-12-01)

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