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NO.727 モノ編

2022.07.13 | パネリング 借景

アッシュ 無垢パネリング 草木染GR840[ゴバイシ]ー四季を愉しむ、自然を愛でるー

はじめに

伝統的な日本建築においては、自然風景との関係が重んじられてきました。現代においても自然を愉しむ美意識は変わらず日本人の心に根付いています。その愉しみ方もさまざまで、お寺の磨かれた床に映り込む新緑や紅葉を見て愉しむ「床みどり」や「床もみじ」が話題になるのもどこか日本人らしさを感じます。
今回は、そのような和の心をご自宅でも愉しむことができるアッシュ[ゴバイシ]無垢リブパネリングをご紹介します。

画像:新緑が映り込む瑠璃光院

上品な艶と禅の心

参拝に行ったお寺で美しく磨かれた床を目にしたことがあるのではないでしょうか。
姿が映るくらいに磨かれた床は、一朝一夕にその艶が生まれたわけではありません。そこには禅の教えが深く関わっています。雲水(修行僧)の生活は全てが修行だと言われています。お寺の運営に関わる全ての雑事は作務(さむ)と呼ばれ、坐禅と同じ修行だと捉えられています。なかでも掃除は大切な作務のひとつであり、「一掃除、二信念」という言葉があるように、何よりも重要なものだとされています。たとえ汚れていなくても、美しいものをさらに美しく、清らかにするために同じところを何十回も何百回も拭きます。掃除をすることでその場所をきれにするだけでなく、自分たちの心についた塵やほこりを払い、さらに磨いているのです。鏡のように光らせた廊下は自分たちの心が磨かれた証なのです。

季節の移ろい

近年ではその美しく磨かれた床に映り込む景色が美しいと話題になっており、新緑の季節には「床みどり」、紅葉の季節には「床もみじ」などと呼ばれ、それらが見られる京都市の実相院門跡、瑠璃光院、滋賀県大津市の旧竹林院や群馬県桐生市の宝徳寺などは、観光スポットとしても注目を集めています。
日本人には古くから自然と一体になり、その変化を愉しむという美意識が根付いています。四季のある日本では、すっきりとした美しくシンプルな空間に、時候に合ったあしらいを足して四季の移ろいを楽しんできました。また、伝統的な日本家屋では、障子を開け放つと庭の自然と一体になって生活することができ、外にある自然を上手に取り入れながら暮らしていました。時が流れた現代においても、自然を取り入れ季節を愉しむ心は大切にされています。
今回ご紹介するアッシュ[ゴバイシ]無垢リブパネリングでは、その上品な艶を利用して、外の自然や花器に生けた植物を映り込ませて愉しむことができます。狭小住宅が増えている現代の日本においては、窓を開け放って立派な庭園と一体になることは難しいかもしれませんが、工夫次第で普段の暮らしに自然を取り入れることができるのです。
さらに、アッシュの魅力でもある力強い木目が、水面に広がる波紋のように見え、まるで日本庭園の池に景色が映り込んでいるかのような趣が感じられます。

ではどのように趣のある色・艶を再現しているのでしょうか。
基材となるアッシュは、力強い木目と堅く粘りのある材質が特徴のモクセイ科トネリコ属の広葉樹で、野球のバットにも使われています。本来は白く明るい色味をしているアッシュですが、「熱処理」と呼ばれる水と熱による蒸気のみを用いた特殊な処理を施すことで、渋みのある茶色へと変化しています。アッシュや熱処理については、以下にて詳しくご紹介しています。

>タモ・アッシュ材−野球のバットにも使われる、歴史ある優良材−【705号】

>床暖房対応フローリング[熱処理]

アッシュ(熱処理前)
<アッシュ(熱処理前)>

アッシュ[熱処理]
<アッシュ[熱処理]>

長年使用したかのような渋い色味を楽しめるアッシュの熱処理材に五倍子(ごばいし)を使った「草木染」を施し、深みのあるブラウンに仕上げています。染料に使用している五倍子(ごばいし/ふし)とは、ウルシ科の植物である白膠木(ぬるで)の小枝や茎にできた瘤のようになった塊を乾かしたもののことを指します。虫による刺激によって保護成分であるタンニン酸がその部分に集中し、ふくらんで瘤のようになります。中が空洞になっていることから空五倍子(うつぶし)とも呼ばれています。大量のタンニンが含まれており、染料の他に薬用や革をなめすときに使われてきました。草木染の染料としての歴史も古く、平安時代から伝わる伝統色である「空五倍子色(うつぶしいろ)」は、五倍子で染めたような薄墨色をしていることからそのように呼ばれています。
また、江戸時代の既婚女性のシンボルでもある「お歯黒」にもこの五倍子が用いられていました。お歯黒は魏志倭人伝に「黒歯国有り」との記述もあり、日本で最も古い化粧ではないかと考えられています。五倍子に含まれるタンニンには歯槽膿漏や虫歯の予防効果があり、お歯黒は美容と健康の維持のために広く普及したと言われています。
伝統的な染料である五倍子を用いて奥行きのあるセピア色に仕上げたアッシュ熱処理材を、最後に鏡面仕上げの塗装を施すことで磨き上げられた艶のある材面を再現しています。

画像:白膠木(ぬるで)にできた空五倍子(うつぶし)

上品に、かつ使い込まれたような艶と色味を再現し、美しい映り込みを愉しむことを目指して生み出されたアッシュ[ゴバイシ]無垢リブパネリング。五倍子で染めた上品なブラウンの艶の向こうにアッシュ[熱処理]材自体の茶色が透けて見えることで、セピアな印象に仕上がり、上品でアカデミックな雰囲気を感じることができます。四季を楽しみ自然を愛でる日本人の琴線に触れる、上質な暮らしを実現する空間のアクセントになるのではないでしょうか。

【参考文献】
福田邦夫(1987)『日本の伝統色 色の小辞典』読売新聞社
福田邦夫(2005)『すぐわかる日本の伝統色』東京美術
森村宗冬(2013)『美しい日本の伝統色』山川出版社
枡野俊妙(2015)『片づける禅の作法』河出書房新書

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