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NO.718 モノ編

2020.06.29 | 格子

格子ー空間における役割~インテリアのアクセント~ー

はじめに

古くから日本の建築に取り入れられてきた格子。格子が日本建築に取り入れられてきたのには、空間を狭く感じさせることなく、採光を活かして部屋を区切ることができたり、フィルターのように通風を確保しながら視界を制限したり、家のアクセントとなる装飾としたりといった様々な理由があったからです。今号では、マルホンの格子の紹介と、格子がどのように使われてきたのかを紹介していきます。

格子の施工事例 ウォールナット

格子の歴史

 我が国における格子の歴史は古く、飛鳥時代までさかのぼります。大陸より寺院建築が伝来した折、その窓の意匠として用いられたことが格子の始まりとされています。現存する最古の例は7世紀前半の飛鳥時代(西暦607年・推古天皇15年)に建立された法隆寺の西院伽羅回廊の「連子窓」(れんじまど)とされており、奈良時代(西暦698年・文武天皇2年)に完成したとされる薬師寺や春日大社の回廊、山田寺の発掘調査で出土した回廊の遺構でも使用が確認されています。平安時代の寝殿造では、雨戸の役割として碁盤目状の桟に板を張った戸が格子(蔀戸(しとみど)とも言います)と呼ばれていましたが、室町時代になると桟の間が開口になっている格子が町屋に現れます。
当時の格子は縦横に組まれただけの粗い単純な形状のものが主流でしたが、室町時代の末から安土桃山時代にかけて工具が発達したことにより、材を美しく仕上げることができるようになり、繊細な格子ができるようになったと言われています。
中世になって特に禅宗様建築の到来とともに繊細な感覚を持つ格子が出現し始め、格子の多様化が始まったとされています。

安土桃山時代になると、格子は防犯の役割も担うようになりました。多くの「洛中洛外図屏風」に描かれた風景には、街路に面した外壁の各所に縦横細かに固定式の格子が施され、町屋(商家)の標準仕様とされていたことが見て取れます。「戦乱の世」とも言われ、物騒だったこの時代、防犯のために格子が標準仕様になっていたとも言われています。

格子の役割

 格子は、日本の伝統的な建築によく見ることができます。特に伝統を守る町屋建築においては、格子はその象徴とも言え、さまざまな役割を担ってきました。
そのひとつが先述の防犯的役割ですが、格子の代表的な役割として考えられているのがフィルター機能です。京町屋の場合、「うなぎの寝床」とも呼ばれる細長い敷地が特徴で、側面は隣の家とも接しているようなところが多く、採光や通風のために街路側に大きな開口が欠かせませんでした。しかし、建物と往来する人々との距離が物理的に近いため、プライバシーや防犯にも配慮する必要がありました。そこで活躍したのが格子だったのです。外から中が見えにくく、中からは外がよく見える格子はブラインドの役割を果たしています。視覚的に外部と通じることで、中にいる人に心理的なゆとりをもたせる機能があるとも言われています。
このように町屋文化に根付く格子は、古くは屋内と外界を隔てる意味から「隔子(かくしまたはとびら)」とも書かれていました。

画像2:町家(写真素材-フォトライブラリー)

京町屋における格子

 先述の通り、「意匠性」と「機能性」の両方を併せ持つ格子は、京町屋といえば格子といわれるほどに京の街並みに欠かせないものとなり、さまざまな種類が存在しています。そうした京町屋の表の格子は、その家の職業をも表すようになりました。代表的なものをご紹介します。

<酒屋格子>
重太めの頑丈な作りが特徴。酒樽が当たることもあるため、色付けした材を使用している。

京町家の表格子 酒屋格子
画像3:酒屋格子

 

<米屋格子>
酒屋格子と同様すべてが太い作りになっているが、押角か丸太の生地物を使って米に色がつかないように考えられている。

京町家の表格子 米屋格子
画像4:米屋格子

<糸屋格子>
縦の桟を数本ごとに細かいものを入れた格子。糸の色の違いを判別するために上の部分があけて光を取り入れている。

京町家の表格子 糸屋格子
画像5:糸屋格子

<炭屋格子>
薄い板を使ったスノコのような格子。炭の粉が外に飛び出るのを防ぐために板の隙間が狭くなっている。

京町家の表格子 炭屋格子
画像6:炭屋格子

何気ない造作物に見える格子ですが、当時の町大工の粋や理にかなった機能性が感じられ、そのバリエーションが京の町を彩り、独特な街並みを形成するのに一役買っているのです。

マルホンの格子

 マルホンでは10種類の格子のパターンをご用意しています。サイズ、塗装変更に加え、樹種、形状変更といった特注対応までも可能です。

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画像7:特注格子(ヒノキ)
格子 特注格子"
画像8:特注格子(ホワイトアッシュ)

 古くから日本家屋で使用されてきた格子。格子を通して差し込む光は、陰影を楽しむ日本的な空間を演出します。また、時に壁のように空間を隔て、時には窓のように光や風を取り込む格子は、すべてを割り切るのではなく多重的な曖昧さを好む日本的感性を体現しているかのようです。日本建築らしい和の空間に、アクセントとして格子を取り入れてみてはいかがでしょうか。

【製品情報】
>格子

 

【参考文献】
講談社編(1985)『住まいの歳時記』講談社.
和風建築社編(1996)『格子の表構え』学芸出版社.
PHP研究所編 (2006)『風土に合った生活 和風建築の大研究』PHP研究所.
川島宙次(2016)『民家のデザイン‐日本編‐』水曜社.

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