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はじめに

お客様からは「無垢材を使いたいが、暴れるのですよね?」というお問い合わせをいただくことがあります。もちろん乱暴なふるまいをするという意味ではなく、無垢材が「反ったり割れたりする動き」のことを、人間になぞらえて「暴れる」と形容しているのです。実際に、神社やお寺の床がお椀のように反り返っている様子を目にされたことのある方も多いでしょう。
しかし実はこの動き、無垢材を製品化する際に、その目的に応じた乾燥工程次第で最小限に抑制することができます。今号では、良質な無垢材を選んでいただくための知識として、“木材の乾燥”についてご紹介します。

無垢材と膨張収縮による「動き」

そもそも、無垢材はなぜ動くのでしょうか。簡単に言うと、それは木材が「呼吸をしている(=膨張収縮する)」からです。無垢材は、周囲の温度や湿度に合わせて、空気中の水分を吸放出しているのです。梅雨時など湿気が多い時には、その湿気を吸収することで、木が膨らみます。一方、冬場のような乾燥状態では、木の中に含まれる水分を放出するので、木は縮みます。この膨張収縮が、木材の「動き」です。この動きによって空間の湿度を適度に調整してくれるため、無垢材は”天然のエアコン”と呼ばれることもあります。
なお、風邪やインフルエンザウイルス(概ね新型コロナウイルスも同様と思料)などの感染症には低温低湿を好むものが多いとされ、厚生労働省による換気に関する資料*によると「居室の温度および相対湿度を18℃以上かつ40%以上に維持する」ことが推奨されています。湿度を適度に保つという無垢材の作用は、健康な生活のためにも非常に有益なのです。
しかし、膨張収縮による動きが必要以上に大きくなると、反りや割れが生じてしましまうことがあります。この動きを適切にするため、材とするまでに乾燥が必要になるのです。膨張収縮の動きをゼロにすることは不可能ですが、木材を適切に乾燥させることによって、最小限に抑えることはできます。逆に言えば、乾燥が適切になされなかった場合、膨張収縮による反りや割れなどのリスクが高まってしまうのです。

*出典:厚生労働省. “冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法について”. 2020.11.27.
https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000698849.pdf , (参照 2021.5.10)

木材乾燥と含水率

木材乾燥の指標は「含水率」です。物質に含まれる水分の割合を「含水率」と呼びますが、この場合は木材に含まれる水分の割合を指しています。
水分を多く含んだままの、含水率が高い木材を使用した場合、反りや割れの生じるリスクが高くなってしまいます。木材には最も材が安定すると言われている含水率(=平衡含水率)があり、木材を適切に乾燥し、日本の住環境に適した平衡含水率に調整することが、木材の「動き」を抑制するために非常に重要です。食品や農林水産品の規格を定めたJAS(日本農林規格、英:Japanese Agricultural Standards)においても、人工乾燥を施した単層フローリング(無垢フローリングのこと)について、針葉樹は15%以下、広葉樹は13%以下の含水率にするよう定められています。
ちなみに、逆に過乾燥状態の木材を使用した場合は、湿気が出てきた際に多少なりとも膨張するため、スペースを開けながらの施工が必要となるのですが、そうしなかった場合には動きを逃がすことができないため、カッピング(お椀型の反り)や割れが起きやすくなってしまいます。
含水率や平衡含水率についての詳しい情報は、下記をご参照ください。

▼平衡含水率
https://www.mokuzai.com/LearningWood/in_di-8

 

画像1:無垢フローリングと含水率計

木材乾燥の必要性

木材の膨張収縮を抑え、反りや割れを防ぐこと以外にも、木材を乾燥させることには多くのメリットがあります。

■木材の強度が高まる
伐採したてで乾燥前の木材は、水分を多く含んでおり、樹種によっては含水率200%に達するものもあります。この状態の木材は柔く脆いため、建築に使用できるような強度は到底ありません。しかし、木材乾燥をすることで木材自体の水分が少なくなり、同時に強度が高まります。含水率には「繊維飽和点」と呼ばれるポイント(多くの樹種において、含水率約30%)があり、ここを境に強度が高まっていき、建築に使用できるほどの強度になります。
繊維飽和点については、下記のページをご参照ください。

▼繊維飽和点
https://www.mokuzai.com/LearningWood/in_di-62

■菌の発生を抑える
木材が劣化する要因のひとつは、木材腐朽菌です。これは木材の主成分であるリグニン、セルロース、ヘミセルロースを分解する菌であり、木材の含水率が25%~150%の時に発生しやすいとされています。木材を適切に乾燥させ、含水率を下げることで、劣化の原因となる腐朽菌の発生を抑制することもできます。

そのほかにも、単純に重量が減ることによって輸送や持ち運びが容易になったり、水分が減ることで接着や塗装が容易になったりと、木材乾燥にはさまざまなメリットがあります。

浜松市と人工乾燥

木材乾燥には、大きく分けて2つの方法があります。ひとつは天然乾燥、もうひとつは人工乾燥です。

■天然乾燥
屋外に木材を堆積し、自然に乾燥させる方法で、古くから幅広く行われています。
重機もなく、切り倒した木材を山から降ろすことも困難だった時代には、伐採した木材を葉も落とさず森の中に半年弱ほど放置し乾燥させる「葉枯らし」という乾燥方法が一般的でした。年月をかけてゆっくり自然に乾燥させるため、木材の質や色味を損なわずに乾燥させることができます。
しかし、前述したJAS規格(含水率13~15%以下)を満たすためには、数年もの長い時間が掛かってしまいます。また、天然乾燥のみでは到達する含水率に限度があるため、現在は、建材として利用をするのであれば天然乾燥をした後に人工乾燥をすることがほぼ不可欠になっています。

画像2:天然乾燥

■人工乾燥
乾燥機等を使用し、温度や湿度を調整しながら乾燥を行う方法です。
人工乾燥の種類は様々ありますが、最も一般的なのは木材を熱風によって加熱し乾燥させる方法です。その熱源としては蒸気式が多いものの、ガス式や電熱式などの乾燥機もあります。天然乾燥とは異なり、人工的に条件をコントロールできるため、簡単に適切な含水率まで乾燥させることが可能です。また、乾燥期間が7日~10日程度と、天然乾燥より短期間で乾燥できるというところも、現在一般的に人工乾燥が行われている理由のひとつです。
最近では、高周波を利用して内部から加熱を行う高周波乾燥という方法も用いられています。マルホンでも、天竜スギや尾鷲ヒノキなど含水率のコントロールが比較的難しい針葉樹においては、高周波乾燥機を用い、木材の芯までしっかりと乾燥させています。

画像3:人工乾燥

マルホンの取り組み

マルホンでは、適切な木材乾燥による、徹底した含水率の管理を行っています。
一般的に、海外からの輸入材は、輸出地の平衡含水率を基準として乾燥しているケースが多々あります。しかし、平衡含水率は温度や湿度によって変わります。つまり、輸出地が暑くジメジメした気候であれば平衡含水率は高くなり、寒く乾燥している地域では平衡含水率が低くなる傾向があるため、それをそのまま日本で使用してしまうと、反りや割れといったリスクが高くなってしまうのです。また、日本の平衡含水率を基準としている場合でも、より含水率の低い屋内ではなく、屋外の含水率を計測していることも多く、しばしば動きの要因になっています。
マルホンでは、国産材、輸入材を問わず、日本の室内の平衡含水率に合わせ、安定状態まで乾燥させたうえで、国内外で検品を行ってお客様へお届けしています。またマルホンでは、環境保全活動と持続可能な木材資源の保持に早期から取り組んでいます。認証木材の商品化や、独自の木材調達プロセスの導入のほか、重油などの化石燃料ではなく木くずを燃料としたり、電気式の乾燥機を用いたりするなど、人工乾燥においてもでき得る範囲で、環境保全対策を進めています。
環境保全に関する国際的な取り組みや、マルホン独自の取り組みについては、下記をご参照ください。

▼持続可能な世界のための取り組み
https://www.mokuzai.com/contents/column/sustainable/

今回は、無垢材と乾燥についてご紹介しました。一口に乾燥と言っても様々な方法があり、それにより木材の品質も左右されます。長く一緒に過ごす無垢材ですから、適切に乾燥された材を使って快適に過ごしたいものです。無垢材を選ぶ際には、乾燥にも着目してみてください。

 

<参考文献>
木材活用事典編集委員会(1994)「木材活用事典」
佐道 健(2001)「木が分かる 知っておきたい木材の知識」学芸出版社
「木の家」プロジェクト(2000)「木の家に住むことを勉強する本」泰文館
河崎弥生(1999)「-建築用針葉樹製材のための-人工乾燥材生産技術 入門 第2版」
岡山県木材加工技術センター
前間孝則(2001)「日本のピアノ100年」草思社
静岡県文化財団(2015)「浜松ピアノ物語」

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無垢木材の「質感」・「香り」・「あたたかみ」を実際に体感いただくため、 株式会社マルホンでは、浜松と東京、大阪、福岡の4箇所にショールームを開設。 いずれもフローリングやパネリングを始めとする、国内外の豊富な木材をご紹介しております。
専門スタッフが適材適所の木材選びをサポート。 目で見て、手で触れて、ダイレクトに感じて、ご希望に合った無垢木材をお選びください。

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