タガヤサンは東南アジアが原産のマメ科ジャケツイバラ亜科の広葉樹です。非常に重たく硬い木で、まるで「鉄の刀のようだ」ということから、別名《鉄刀木》とも呼ばれています。その重硬で緻密な材質から、紫檀・黒檀と並び、《唐木三大銘木》と呼ばれ、古くから銘木として珍重されてきました。
写真1:タガヤサン施工例画像
唐木とは? 〜伝統工芸品の唐木細工〜
唐木とは、中国、タイ、東南アジア等から輸入される高級木材の総称で、熱帯産の希少価値が高い高級銘木の代名詞です。唐木の歴史は古く、奈良時代の遣唐使が持ち帰ったことが始まりとされています。
東南アジアが原産で、中国を経由して日本へ伝わりました。
遣唐使が持ち帰ったものの中に、日本にはない珍しい木(素材)を使った工芸品などがあり、「唐からきた木」という意味で、「唐木」と総称されるようになりました。
唐木は重厚かつ濃色で仕上げの表面が美しく、装飾性に優れているのが特徴で、当初は寺社仏閣の装飾材として使われていました。正倉院御物にも当時の唐木細工が多く残ることから、古くから高級材として利用されていたことがわかります。
「木のダイヤ」とも呼ばれるほど硬く、唐木細工には特殊な工作道具が必要になります。また、釘を打つのにも一苦労な硬さのため、釘を使用せずに、木と木の組み合わせだけで製作する「ホゾ組み」でつくられています。高度な技巧が必要とされており、貴族の調度品として用いられていました。
重く硬い鉄刀木
非常に重さがある唐木ですが、その中でもタガヤサンの比重は0.7〜0.85で、水に沈むほどの重量がある木です。
また、硬さも兼ね備えていて、主に欧米で使われている硬さの数値(ヤンカ硬さ)でいうと、タガヤサンは1490という数値になります。1200以上で土足による重歩行に耐えうるとされているので、その硬さは相当なものです。あまりの硬さに、製材する際に鋸の刃が欠けてしまうことも多く、何度も刃を目立てしなければならないほどです。
また、腐りにくいことから、家が長く続くということに掛けて、床柱に使用されることもあります。
詳しくはこちら、木材の基礎知識
『無垢フローリングの硬さ』をご参照ください。
表情豊かな銘木
心材は濃褐色〜黒褐色で、淡黄色の縞模様が出てくるのが特徴です。「タガヤ目」と呼ばれる美しい紋様が現れます。
辺材は白色〜淡黄白色。この黒と白のコントラストが他の唐木にはない特徴です。
写真2:タガヤサンの木目
同じように濃い目の色味を持つ北米産のウォールナットとその表情を比べてみましょう。
ウォールナットのキャラクターグレードは優しいチョコレート色の中にクリーム色の白太が混じっています。
それと比べてタガヤサンは心材部分の黒に近いブラウンとの黄色のコントラストがはっきりとしており、木目も相まってワイルドな印象です。
木肌は粗めですが、磨くと光沢が生まれ、絹のように滑らかで、使い込むほどに艶が増します。
タガヤサンはキャラクターグレードで仕立てているので、タガヤサンが持つ個性がより際立っています。
写真3:タガヤサンとウォールナットの表情の比較
医学的価値
アフリカやアジアでは、古くから民間療法でタガヤサンが使用されており、葉、茎、根、花、種子などは煎じて薬として飲まれています。
ベータカロチンやビタミンC、カルシウムなどが豊富に含まれる葉や茎・花などは、腹痛や便秘、マラリアなどの治療に使用されています。
タイの伝統医学では安眠効果のあるハーブとしても知られています。タガヤサンの葉にはbarakolという睡眠障害にも有効な成分が含まれており、その高いリラックス効果から、ハーブボールや入浴剤に使用されることもあります。
また、タイではタガヤサンの葉は身近なハーブとして、カレーやスープなどの料理に日常的に使われています。たくさん食べると翌朝には効果が現れると言われており、デトックス効果があるとされています。
環境に優しい植林材
タガヤサンは成長が遅く、使用できる大きさになるまで70〜80年かかると言われています。そのため、他の短期期間で伐採可能な大きさに成長する木材の植林が優先されるため、タガヤサンの植林は、あまりされていませんでした。
しかし、近年では、自生するタガヤサンが減少していることや、東南アジアの国々で伐採や輸出が規制されていることもあり、積極的に植林が進められています。
写真4:タガヤサン丸太