天然素材である無垢材は、意匠・性能の両面を満足する建材として、フローリングやカウンターなどの目につき、肌に触れる場所はもちろん、窓枠や巾木といった空間のアクセントとなる部分にも積極的に使用されています。ところが、“壁”や“天井”に関しては和室以外で無垢材を使用する例が少なく、クロス張りが主流となっています。“壁”や“天井”は“床”とは異なり、触れて感じるというよりは、目で楽しむという要素が大きい部位です。
これら“壁”“天井”に使用するパネル材は、日常的に多くの人に踏まれるフローリングに比べ、痛みにくく、食べ物等の汚れもつく恐れも少ないため、無塗装で使われることも見うけられます。
今号では、そんな無垢のパネル材を無塗装で使用する場合の注意事項をご紹介します。
パネリング施工例
<原因>
なぜこのようなことが起こるのか?主な原因は、経年変化によるものです。木材は光(特に波長の長い紫外線)の影響を受け、木材の構成成分であるリグニンや抽出成分が分解され、材面の色合いが変化します。木材を直に手で触れると油分が付着し、その部分だけ経年変化のスピードが異なり、時間の経過につれて手の跡が、徐々に浮かび上がってしまいます。
また、この原因に加えて人間の汗の中に含まれている様々な成分の酸化も起因します。酸化というと難しく聞こえますが、衣服に付着する皮脂汚れと同じ原理です。
なお、この現象は特に日焼けのしやすいマツ類やベイヒバ、スギなどによく見られます。
<予防法>
予防法としては、
(1)素手で触れないこと。施工する際は必ず手袋をつけて施工することをおすすめします。特に夏場の汗のかきやすい時期は注意してください。
(2)ワックス等でコーティングされた材を使用する(弊社で扱っている塗料では
Arbor針葉樹白木用オイルワックスや
Arbor蜜蝋樹脂ワックスをおすすめ)。なお、オイル塗装でもある程度の効果はありますが、木材の中に浸透する塗料のため、コーティング力のあるワックス塗装の方が予防効果は高く、おすすめです。
<対処法>
一度、浮き出てきた手の跡を消すのは、非常に難しく、削り取るか、特定の薬品で洗い流すしかありません。しかし、これらの方法はムラになる恐れがあるため、専門の業者にお願いすることをおすすめします。
気をつけていただきたいのは、施工時ばかりではありません。お住まいになられてからも、エアコンのお掃除をする際等、うっかり素手で触れてしまうことがあります。特に普段手を触れない天井は無塗装のまま施工することが多い箇所です。後々の後悔することがないよう、注意しましょう。