木が使われている空間にいると、なんだかリラックスして癒されるという方も多いのではないでしょうか。
リラックスして癒される一つの理由として、木目にある「1/fゆらぎ」というリズムによる視認効果があります。「1/fゆらぎ」とは、自然界で生み出された、規則性と不規則性がちょうどよいバランスで調和したパターンのことで、この「1/fゆらぎ」に、人は無意識のうちに心地よさを感じると言われています。木目の間隔は、等間隔に見えてもわずかなズレがあり、まさに心地よいと感じる「1/fゆらぎ」のリズムを持っているため、リラックス効果をもたらすのです。木目以外では、心音、ろうそくの炎の揺れや雨音などにも同じゆらぎがあります。
また、木造校舎で生活する子どもは、目の疲れを訴えることが少ないと言われています*。それは、木材には目にやさしい特徴がいくつもあるからです。例えば、木材はコンクリートなどの無機材料と比べると、目に有害な紫外線を吸収する効果が高いことがわかっています**。他にも、木材の表面には、肉眼では見えないほどの細かな凸凹があり、この凸凹に当たった光は一直線に反射せず拡散されるので、眩しさを軽減してくれます。さらに、ある実験結果によると、手や足で木材に直接触れることで、目のピント調節に関わる微動調節機能に良い変化をもたらすことがわかっています***。このような理由から、子どもたちに目の疲れが起こるリスクが少なくなっていると考えられます。
視覚特性については以下の記事も合わせてご参照ください。
>目にも心にもやさしい木目の科学
*服部芳明, 橘田紘洋「校舎構造材料の及ぼす児童の身体の調子への影響 : 最近の木造学校校舎の教室環境に関する研究(その 3)」『鹿児島大学農学部演習林報告 第20巻』1993, p.8
**武田雄二「建築材料の紫外線反射特性の概要の把握」『日本建築学会構造系論文集第505号,31 -36,』1998参照の上、作者編
***山田正編『木質環境の科学』海青社, 1987, p.403, 「実験 Ⅱ床材料が与える皮膚刺激が微動調節に及ぼす影響」