伝統的な表面加工は手作業。伝統的ななぐり加工ができる職人は減りつつあります。「カンッ、カンッ、カンッ…」というリズミカルな音とともになぐりの表情が生まれていきますが、技術が未熟だと逆目になってしまいささくれがおこる、しかしかえって上手すぎても自然な風合いが消えてしまうという、まさに職人技なのです。
■なぐり加工
釿によるなぐり加工には「山なぐり」と「化粧なぐり」の2種類があります。
山なぐりは、元々は伐採した木を山から運び出す前に施されていた加工で、丸太の表皮や白太などの余分な部分をはつったものです。なぐりが使われ始めた当初の意図が踏襲された、野趣あふれる加工方法で門柱や小屋梁などで見られます。
化粧なぐりは、角材や板材に製材してから表面をはつったもののことで、床柱や床框、落掛、腰板、門扉、濡縁などに見られます。道具は釿を使用し、刃の形によって仕上がりの表情に違いが現れ、刃先がまっすぐな平釿で施したものは、平一枚なぐりといい、刃先が弧を描いた釿で施したものは、六角形が重なった表情になり亀甲なぐりと呼ばれています。
■うづくり
うづくりは、釿による表面加工ではありませんが、伝統的な木材の表面加工のひとつです。
木材の表面を、カルカヤ(イネ科の植物)の根やシュロ(ヤシの木の樹皮の毛の部分)を束ねた道具などでこすり、木目を際立たせる技法です。柔らかい夏目を押さえて、硬い冬目を残すことで浮き立たせ、立体的な表情をつくりだし、主に天井板などに使用されていました。
なぐりは「名栗」と表され、その名の通り、主として栗材に施されていました。水に強く、いい光沢が出るから、というのが理由です。しかし、建築資材としての木材の多様化が進んでいる現在では、多彩な樹種に施され、表面加工の種類も増大しています。また、職人技として手作業で行われていたなぐり加工も、現在では機械でその味わいを表現させることが多くなりました。
左上の「亀甲なぐり」や、左下、「丸鋸目」などのほかにも、
多種多様な表面加工が登場しています。(参考画像)
左上の「亀甲なぐり」や、左上、「丸鋸目」などのほかにも、多種多様な表面加工が登場しています。(参考画像)