パイン材
―ナチュラルで素朴な表情と心地よいあたたかみ―
【703 号】

 やさしい肌触りとあたたかみ、ナチュラルな雰囲気で人気があるパイン材。パインとは日本語でいうとマツの木のことです。その種類は世界中で50種類以上あるともいわれており、一言にパインと言っても産地や種類によって木目や堅さなど特徴がそれぞれ異なります。
 今号では代表的なパイン材を中心に、その特徴をご紹介します。

シルバーパイン 無垢フローリング 施工例
画像1:シルバーパイン 無垢フローリング 施工例

シルバーパイン 無垢フローリング 施工例
画像1:シルバーパイン 無垢フローリング 施工例

日本のマツ
 
 日本でマツといえばアカマツ(メマツ)、クロマツ(オマツ) 、唯一の落葉針葉樹であるカラマツが有名で、古くから木造建築の梁や桁、鉄道の枕木などに広く利用されてきました。その他、油分の強い部分は松明として灯火・照明や祭事にも使用されています。日本三大松原のひとつである三保の松原は、日本最古の歌集『万葉集』や葛飾北斎の『富嶽三十六景』にも登場するなど、日本人によって身近な存在であり、今もなお愛されています。さらに2013年には「富士山―信仰の対象と芸術の源泉」としてUNESCOの世界遺産リストに登録されており、日本だけでなく世界からも注目されています。しかし、日本人の生活に深くかかわってきたマツは、近年ではマツクイムシなどの被害により希少なものとなっており、各自治体が対策に乗り出しています。
 そのほかに米松(ベイマツ)という名前もよく聞くかと思います。米松と書くのだからアメリカのマツであろうと考える人が多いと思いますが、実はマツではなく、トガサワラ属で英名をダグラスファーと言います。木材業界では「サクラ材」をはじめ、一般的によく知られている木の名前を使うことがよくありますが、ベイマツは色や木目、性質がマツに似ているため、マツという名前がつけられています。ベイマツはマツの代用品として明治時代から日本に輸入されている外材の中では最もポピュラーな材のうちのひとつです。
代表的なパイン材
 
 一般的にパイン材と呼ばれるものにはどういったものがあるのでしょうか。実はたくさんの種類がありますが、日本において建材や家具で使用されるパイン材はシルバーパイン(欧州赤松)や北米のポンデロサパイン、オセアニア産のラジアータパイン等がメインです。どの種類にも共通して柔らかさ、あたたかみ、素朴さ、美しい木目、経年でやさしい飴色に変化するという針葉樹ならでは特徴があります。

>針葉樹と広葉樹の違い
>やさしい木のぬくもり~足を冷やさない木の秘密~

■シルバーパイン
学名:Pinus sylvestris
日本名:レッドウッド、シルバーマツ、オウシュウアカマツ

 一般的にはロシアのシベリアから多く輸入されていた欧州赤松や、構造材としてよく使用されている北欧産のレッドパインとして、日本ではなじみの深い木材です。元々は北欧における代表的な針葉樹で、スウェーデンでは森林全体の38%*を占めています。産地である北欧では心材が赤色を帯びることからレッドウッドとも呼ばれていますが、アメリカ産のレッドウッド(スギ科セコイア属)とは全く別の樹種です。
 白味と赤味が混在するナチュラルさが魅力で、等間隔に散在する節が自然の風合いとぬくもりを醸し出します。寒冷地で生育しているためゆっくりと育ち、年輪幅が狭く、密になり、きめの細かく美しい木目となるのが特徴です。心材は赤褐色、辺材は淡黄白色で、材質は日本のアカマツとほぼ同じです。すっきりとして清潔感あふれる表面は年月を経て飴色に変化し、マツ特有の美しさを楽しむことができます。また、針葉樹ならではの柔らかさが素足にぬくもりと心地よさを伝えます。
 北欧は、早くから林業の機械化が進み、労働生産性の大幅な向上と低コスト化を実現しており、さらに木材生産の保続に加えて生物多様性や地域社会の維持・発展を考慮した「持続可能な森林経営」を世界に先駆けて導入した地域です。木の成長に沿った森林管理が行われており、樹木を最終伐採する際には、自然再生の可能な地区では種子を落とす親木(マザーツリー)が残され、それが不可能な場合には栽培苗木による植林が行われます。植林をする場合には、伐採後3年以内に苗木を植えなければならないことになっており、その数は2,000~5,000本/haにものぼります。しかし、このすべてが成長し伐採されるわけではなく、成長過程で間伐されたり淘汰されたりするため、最終的には400~600本が残り伐採されます。植林から伐採までは約60~150年と長いものの、それが繰り返されるような徹底した森林管理がなされているため、安定した供給が可能です。

*Swedish Forest Agency(2015)「Forests and Forestry in Sweden」,[online]
https://www.skogsstyrelsen.se/globalassets/in-english/forests-and-forestry-in-sweden_2015.pdf(参照2018-5-1)


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画像2:シルバーパイン 立ち木
■マリタイムパイン
学名:Pinus pinaster
日本名:カイガンショウ、カイガンマツ、オニマツ

 カイガンショウとも呼ばれるフランス原産のパインで、海岸沿いの防風林として用いられてきました。マリタイム(Maritime)とはフランス語で海岸を意味し、今から2世紀ばかり前のナポレオン3世の時代に、防砂風林として植林されたことがそもそもの始まりであったと言われています。数ある樹木の中から植林に適していると選ばれたのですが、年間降水量が乏しく、日差しの強い土地で根を広げることができたのが、そもそもマツくらいしかなかったからなのです。日本でも三保の松原や、気比の松原、虹の松原の日本三大松原に代表されるように、塩害や風に強いクロマツを中心に、よく砂浜に植えられています。
 砂地で育ち、地中海からの強い風と紫外線に晒されるという過酷な生育環境から他のパイン材よりも堅いのが特徴です。そのため、マリタイムパインの樹皮の厚さは、10cmに及ぶこともあります。この樹皮から得られる抽出物である抗酸化物質OPCは毛細血管を保護し、動脈硬化・心筋梗塞・脳梗塞・静脈瘤などを予防する効果があると言われており、半世紀以上も前からヨーロッパを中心にサプリメントとして活用されてきました。

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画像3:マリタイムパイン 立ち木
■ポンデロサパイン
学名:Pinus ponderosa
日本名:ポンデロサマツ

 主に米国の西海岸に生息しており、樹高が高く、大径木なため、幅広材や長材が採れることが特徴です。名前の由来は英語の「Ponderous」からきており、重々しい、どっしりとしたという意味があります。他のパイン材と比べてヤニが少ないため、適度に強度があり、木目が直通で、仕上がりも美しいことから、床材はもちろんカントリー調の家具やドア枠、窓枠などにも利用されています。上品で明るく、クリーミーなホワイトの色合いですが、経年変化が美しく、深みのある飴色に変わっていきます。日本の姫小松に似ており、和洋問わずさまざまな空間コーディネートが可能です。

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画像4:ポンデロサパイン 立ち木
■サザンイエローパイン
学名:Pinus palustris, Pinus elliottii, Pinus echinata, Pinus virginiana, Pinus rigida, Pinus spp.
日本名:ロングリーフパイン、ショートリーフパイン、タエダパイン、スラッシュパイン、サザンパイン、テーダマツ、イエローパイン

 サザンイエローパインという名称は、米国のテキサス州からバージニア州までの、南部諸州に生育するパイン類で、ロングリーフパイン・ショートリーフパイン・ロブロリーパイン(タエダパイン)・スラッシュパインの主要な4種を含むいくつかの樹種を総称したものです。心材は赤褐色、辺材は黄白色で、強度があり耐磨耗性に優れ、防腐処理が極めて容易で釘の保持力が高いのが特徴です。日本では遊園地のジェットコースターや、デッキ材など屋外での使用実績が多く、その他にはボーリングのレーンなどでも使用されています。

画像5:サザンイエローパイン 立ち木
■ラジアータパイン
学名:Pinus radiata
日本名:ラジアタパイン、ラジアータマツ、ラジアタマツ

 もともとは米国が原産地の松ですが、成長が非常に早く、20年で樹高25~30mになるためプランテーションに適した木材として古くから植林されてきました。1930年代から40年代にかけてニュージーランドやチリで植林が開始され、ニュージーランドでは全人工林の95%をラジアータパインが占めています。現在、持続可能な森林資源として注目され、その生産量の豊富さから、合板や集成材などで需要が増えています。
 心材は淡褐色~褐色、辺材は黄白色をしており、心材と辺材の差は不明瞭で、驚くほど年輪の幅が広いのが特徴です。マツ科特有の樹脂が非常に強く、耐朽性は低いですが、均一な木目と、加工のしやすさからDIYの素材としても人気があり、ホームセンターなどでも簡単に手に入れることができます。

■ロッジポールパイン
学名:Pinus contorta
日本名:ロッジポールマツ、コントルタマツ

 北米を原産とするパイン材で、カナダ及び米国西部に分布しています。その土地で住むネイティブアメリカンの人たちが円錐形の小屋(ロッジ)を建てるときには、この木の柱(ポール)を何本か立てて、その上を皮や布で覆って作ったといわれています。黄白色~淡黄褐の材面は辺材・心材の色の差が少なく、色板目面を見ると、はっきりとしたディンプルグレイン(小さいえくぼのような模様)があることが特徴です。こちらもホームセンターなどで簡単に手に入れることができます。ちなみに近年ホームセンターなどで販売されているSPF材(Spruced、Pine、Fir)のうち、Pine材として売られているものの中にこのロッジポールパインがかなり含まれています。
 コントルタマツは火事になると「烈開」と呼ばれる現象で、その硬い松かさを開いて種を地面に捲き散らすという自然現象を発生させます。こぼれた種子は火事のあとの焼け野原で発芽し、森林が再生します。火事のあとの焼け野原では、発芽して森林が再生する特性を活かして、コントルタマツの生育するアメリカのヨセミテ国立公園では山火事が起きても火を消さないそうです。
マルホンのパイン材
 
 マルホンでは数多く存在する多種多様なパインの中でも、目的に応じて3種類のパイン材を取り扱っています。北欧産のシルバーパインは、アカマツに似て素朴な木目を持ち、さらに赤い節はヒノキにも似ているため、日本人にはなじみが深いと考えております。
 ポンデロサパインは、他のパイン材と比べてより美しい経年変化を楽しむことができます。ポンデロサパインは時間の経過とともに美しく、高級感のある飴色に変化していきます。
 マリタイムパインは、針葉樹の中でも程よい堅さがあるため表面加工に適しています。針葉樹において表面加工といえば浮造りが主流でしたが、スプーンカットやナイフカットなど、その他意匠性の高い表面加工を楽しむことができます。

パイン材 無垢フローリング 施工例
画像6:パイン材 無垢フローリング 施工例

パイン材 無垢フローリング 施工例
画像6:パイン材 無垢フローリング 施工例


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 パイン材は、柔らかさや美しい木目などナチュラルさが魅力の素材です。無垢材の中では比較的リーズナブルな価格のため使いやすく、手触りのよさやあたたかみ、経年変化など無垢材ならではの良さを気軽に取り入れることができます。さらに着色をすることでアンティーク調やヴィンテージ調、カフェスタイルなど様々なインテリアイメージを醸成するという選択肢も広がります。
 柔らかさゆえに傷がつきやすいという特徴もありますが、それがかえって風合いや景色となって味わいが増すことになります。五感を使って、パイン材を楽しんでみてはいかがでしょうか。

>人気の樹種 パイン材




参考文献
佐道 健(1990)『木を学ぶ木に学ぶ』海青社.
佐道 健(2001)『木がわかる―知っておきたい木材の知識』学芸出版社.
佐伯 浩(2005) 『この木 なんの木』海青社.
Swedish Forest Agency(2015)「Forests and Forestry in Sweden」,[online]
https://www.skogsstyrelsen.se/globalassets/in-english/forests-and-forestry-in-sweden_2015.pdf(参照2018-5-1)