挽板框の特長
―無垢フローリングとコーディネートする周辺部材―【675 号】

 入り口となる空間を引き締める上がり框。上がり框とは、家の玄関などの上がり口の縁に渡される横木のことです。何気なく目にしていながら、その名前や存在にあらためて注目することが少ない部材ですが、フローリングの木端を隠し耐久性を高める機能的な部材です。無垢フローリングを使った空間には、それに引けを取らないしっかりとした素材感を持つ框があると、フローリングのよさが引き立つ印象的な入り口に仕上がります。今回は上がり框の中でも、厚挽きした木材を使って作られた「挽板框」の特長についてご紹介します。

挽板框とそのメリット

 挽板框とは、踏み面の表面に20mm厚、見付面の表面に5mm厚に挽いた木材を使い、集成材と組み合わせて作られた框です。玄関にふさわしい品格のある框というと、昔から使われてきたような無垢の框が挙げられますが、材の乾燥の難しさによる動き・割れとコストが気になります。他方、一般に多く流通している上がり框は、1mmに満たない厚みの「突板」を表面に貼って作られるため、質感や耐久性の面で物足りなさを感じやすいということがあります。
 挽板框は、鋸で挽いた厚い板を用いているため、多少の往来では擦り切れず、凹んだ際も塗装によっては修復ができます。また当社標準の挽板框は、右図のように入り口から見た時に踏み面と見付面の継ぎ目が目立ちにくくなるように作られていて、無垢の框に近い印象を与えます。さらに挽板をしっかりと乾燥させているうえ、表面の挽板と内部の集成材の接着には耐水性が高くホルムアルデヒドを出さない接着剤を使い、長年の使用に耐えうる安全性を追求しています。

無垢フローリングと挽板框の組み合わせ

 挽板框を使う際は、無垢フローリングとどのように組み合わせるのがよいのでしょうか。色味や木柄を揃えて統一感を出したい場合は、下記の対照表のように、「同じ樹種で合わせる」、「よく似た樹種で合わせる」、「着色で合わせる」というのが、組み合わせの基本です。同じ樹種で合わせることができない場合は、色味はもちろん木柄が似た樹種を合わせるとしっくりときます。なお、着色で合わせる場合は、色持ちの点からウレタン塗装がよいでしょう。また、あえてフローリングとは全く異なる樹種で作った挽板框を合わせ、空間のアクセントとして用いる場合もあります。
無垢フローリングと挽板框の組み合わせ 対照表

挽板框の多様化

 一口に挽板框といっても、サイズや形状などの仕様はさまざまです。なかでも小さなサイズの框が、入り口がコンパクトな洋風の住宅やマンションなどの集合住宅、バリアフリー対応の住宅には適しています。框を小さくすると、フローリングと玄関たたきの段差縮小に対応しやすくなり、見た目もすっきりとします。また、30mm×150mm、30mm×90mm のような、さらに小さなサイズの框は、挽板框ではなく無垢の框で作ります。無垢の框で作る場合も、サイズそのものを小さくするには限度があるため、下の図Aのように、見付面を小さくした上で断面に舟型面取りを施し、より薄くすっきりと見せる方法があります。他にも接合部の強度を高めるため、下の図B・Cのようにフローリングや下地材のための溝(シャクリ)を施したり、下の写真のように、踏み面の表面材の厚みを活かして、亀甲などの表面加工を施すなど、アイデアひとつで施工性とデザイン性が高まります。
 当社では標準サイズの挽板框のほかにも、物件のデザインに合わせ、お好みのサイズや形状の挽板框をお作りしています。

挽板框と付框・式台

 挽板框に合わせて入り口に用いられる材として、まずは付框が挙げられます。付框とは、玄関たたきの仕上げ材と壁の仕上げ材の境目を隠し、入り口の見映えを向上させるための部材です。付框にも、挽板框と同様に素材感のある部材を持ってくることで、境目を隠すという目的以上に、意匠面での美しさという効果を得られます。
 また、近年のコンパクトな挽板框の普及にも見られるように、玄関たたきと床面の高低差は小さくなりつつありますが、これまでは、上がり框に腰掛けた来客と、床面に正座した家の者とが、目線の高さをあわせて会話できたほどの差があるところが多くありました。その高低差を埋める部材のひとつが式台であり、赤松、栗、桜、楠などの木が使われてきました。式台は無垢の一枚板を用いますが、「幅ハギ材」といって、横方向のみ剥ぎ合わせをした材を使う場合もあります。幅ハギ材を用いることで、空間に合ったサイズや形状に対応できます。式台は下からの湿気によって膨張・収縮しやすいため、小さなサイズの幅ハギ材であってもそり止めを入れるのがポイントです。
 上がり框は、入り口という建物の要を担う場所に備えられた部材であり、人を迎え入れたり内と外を隔てたりといった、空間の使い手の心構えとも深く関係してくる部材です。日々見て触れる部材であるからこそ、入り口にふさわしいしっかりとした仕上がりの挽板框を使ってみませんか。