無垢材と集中力
-部屋に木を使って集中力を高める-【719 号】

 昨今、テレワーク*やオンライン学習といった、自宅で仕事や学習をする機会がぐっと増えています。
 テレワークに関する調査**では、「テレワークで困ること、不便なこと」として、「気持ちの切り替えがしづらく、集中できない」「仕事以外のことをしてしまい集中できない」「子供・配偶者・ペットがいて集中できない」などというように、78.5%もの人が集中できないと回答しています。
 そもそも人間は本来、集中力を持続させることが得意ではありません。狩猟生活をしていた太古の昔、一つのことに集中して周りが見えなくなると、生命の危機に脅かされる可能性があったためとも言われています。ところが、現代の人々は、一つのことに集中して取り組むことが多く求められます。集中力を高めるための工夫としては、生活習慣の改善、適度な休息などが一般的ですが、実は、内装に無垢材を使用することによっても集中力の持続によい影響を及ぼすことがわかっています。
 今号では、無垢材が集中力に及ぼす影響についてご紹介します。


*テレワーク:情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方
**株式会社イード「テレワークに関する調査(1)」(参照2020.7.5)

無垢材と集中力

 日本では、古くから家屋を始め神社仏閣などの多くが木によって建てられてきました。それは、木材資源が豊富であったことが大前提ではありますが、高温多湿の気候に対して、木が持つ湿度を適度に調節する働きや、心地よい香りによるリラックス効果などの様々な利点を、人々が経験的に知っていたからとも言えるのではないでしょうか。

 長い間、感覚的にのみ知られてきたこれらの利点ですが、近年の研究により、科学的に立証されるようになりました。具体的には、無垢材を内装に使用することで、調湿効果、リラックス効果、作業効率アップ、疲労軽減などの効果がもたらされることがわかっています。
 ここからは、これらの利点に関する研究内容と、これらがどのように集中力に関係しているかをお話しします。


画像1:無垢内装材の施工例
■眼精疲労リスクの軽減
 テクノロジーの進化に伴い、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速することで、現代の労働環境は急速に様変わりしています。人が行っていた肉体労働をますます機械が行い、代わりに人は機械の運転・監視・検査作業という、眼を使う作業を担うことが増えています。テレワークともなれば、パソコンやスマートフォンを用いる作業が増え、なおさら眼を酷使します。
 これらの細かな視作業、光源による刺激などから、近年、眼精疲労を発症している人が増加していると言われています。眼精疲労とは、眼を使う作業によって、眼の痛みや充血の他、頭痛、肩こり、イライラ、不眠など、集中力をより低下させる諸症状が現れ、休息をとっても十分回復しない状態のことです***。この眼精疲労に関わる微動調節機能という、眼内の毛様体筋を動かすことで水晶体(レンズ)を厚くしたり薄くしたりして、ピントが合う距離を変化させる働きと、無垢材の関係を調査したデータ****があります。一般的に、微動調節機能の周波数の分布は、若く健康的な方の場合は高い周波数が多く、調節機能に問題がある場合は低い周波数が多くなるとされています。つまり、高い周波数が多くを占めている場合には微動調節機能が良好で、眼精疲労が生じるリスクが低くなるのです。
 暗い部屋で、裸足の被験者に木質の床とビニールタイルの床を踏み比べてもらったところ、木質の床に直接触れている場合、微動調節機能の周波数が高くなる傾向が現れました。このことから、床などの手足に触れる部分に無垢材を使うことで、眼機能によい影響を与え、集中力低下の要因となる眼精疲労のリスクを抑えることができると考えられます。


***矢野雅彦,「VDT(visual display terminals)と眼精疲労」『四国医学誌 第五十八巻 第三号』,2002,p84 参照の上、作者編
****山田正.木質環境の科学 海青社 1987 p.403-「実験 Ⅱ床材料が与える皮膚刺激が微動調節に及ぼす影響」


■睡眠の質の向上
 夜更かしをした翌日に疲れが溜まって、身体がだるく作業に集中できないという経験はどなたにもあるはずです。集中力には、睡眠の質も大きく関わると考えられます。

画像2:寝室の施工例
 木質空間での睡眠の質と、集中力に関する実験の結果があります。広さ・方角・天井高が等しく、部屋の木質化率を変えた3部屋(木質化率0%と45%と100%)を用意し、睡眠時のリラックス状態と深睡眠時間が比較されました。その結果、木質化率45%の部屋が、交感神経活動の活性度において最もリラックス状態であり、深睡眠時間は木質化率45%と100%の部屋において、0%の部屋より14分長くなりました。また、起床時のアンケートで「疲れが残っていない」と回答した被験者の割合は、木質化率45%と100%の部屋が、0%の部屋より33%多いという結果だったそうです。そして、睡眠後のタイピングの作業成績、および作業後に測定した主観集中力に関しては、下図1.2の通り、木質化率45%と100%において高い結果が得られています。
 以上より、内装へ適度に無垢材を用いることが、睡眠の質の向上や疲労回復を促し、ひいては集中力の維持向上につながる可能性があることがいえたのです。

画像3:室内の木質化割合別主観集中力(左)とタイピング作業成績の違い(右)
出典:西村三香子,伊香賀俊治,平田潤一郎,土屋遼太,「睡眠の質と日中の知的生産性を高める住宅内装木質化率に関する被験者実験」
『空気調和・衛星高額会大会 学術講演論文集第6巻』, 2015,p268

■作業効率の向上
 近年、木材の色や香りが自律神経に鎮静効果をもたらし、副交感神経活動を亢進させることもわかりました。自律神経は、心身の健康に大きな影響を及ぼします。その自律神経のうち、副交感神経活動が鎮静化すると、交感神経活動が亢進し、集中力が低下すると言われています。
画像4:ワークスペースの施工例
 ここでは、木質空間での自律神経の状態と作業効率についての実験をご紹介します。広さ・方角・天井高が等しく、部屋の木質化率を変えた2部屋(木質化率0%と50%)を用意し、各部屋で単純作業・創造作業(タイピング・計算作業・マインドマップ*****・数独)を行い、その正答数・有効回答数と、自律神経の覚醒状態を表す交感神経活性度の比較をしたものです。
 結果は、下のグラフのとおりヒノキ無垢材を使用した木質化率50%の部屋の方が、計算作業・マインドマップの作業時、副交感神経活動が亢進しリラックス状態をつくり、作業ミスの減少につながっているというものでした。このことから、無垢材を内装に使用した空間は、副交感神経活動を亢進させ、集中力を高め、単純作業や創造作業の能率向上をもたらすと考えられます。

*****マインドマップ:頭の中で様々な方向に広がる思考プロセスを、ノートに書き記し反映する方法のこと。

画像5:計算作業とマインドマップの作業成績
出典:西村三香子,伊香賀俊治,平田潤一郎,「木質内装空間が自律神経状態を介して知的生産性に及ぼす影響に関する被験者実験」
『空気調和・衛星高額会大会 学術講演論文集第8巻』,2016,p.44

利用すべき木材

 このように、内装に無垢材を使用することには多くの利点があるものの、例えばフローリングにおいても代替品としてのシート・突板または挽板フローリングやタイルといった工業製品などの採用ケースが増えていることにより、現在はそれらが使用される機会が減少しています。これは単に室内環境の快適性が損なわれるだけの話ではありません。仮にその使われない木材が国産であったとすれば、木を「植える→育てる→使う→植える」という森林サイクルが乱れ、森の維持が困難になり、伐採しないことによる花粉の大量発生や、再植林が為されないことによる地球温暖化などといった社会・環境問題の深刻化を招きかねません。そのため、日本では2005年度から林野庁が「木づかい運動」を展開し、木材利用を推進しています。

 しかし、木材であれば何を使っても構わないというわけではありません。例えば、違法に伐採された木材を使用することは、動植物の生育環境や生態系の破壊や、森林減少や砂漠化などによる地球温暖化の進行など、深刻な問題をもたらします。使うべきなのは、合法に伐採され、かつ持続可能性が担保された木材です。
 木材の合法性を見極める際には、FSC®認証やPEFC認証などの国際的な認証制度が役立ちます。これらの認証制度において、適切に管理された森林から伐採された木材には認証マークを付けることができます。認証マークを目印に木材を選んでいれば、知らずに違法に伐採された木材を利用してしまうことを避けることもできます。日本でも、2017年にクリーンウッド法が施行され、合法的な木材の流通・利用を促進する取り組みが行われています。

 新型コロナウイルス感染症専門家会議から「新しい生活様式」(New Normal)が提言され、変化の時を迎えています。住宅はもとより、学校や会社、その他さまざまな施設で無垢材を使用することで、疲労軽減、リラックス効果、睡眠の質が良くなるなどの効果が生まれ、そのことにより集中力がアップし、作業能率が高まることが期待できます。そして、木材利用が増えると、森林が守られ地球温暖化の防止につながります。
 マルホンでは、調達において「持続可能な木材資源保持のための取組み」を行いながら、無垢フローリングをはじめ、壁・天井材、階段などの内装材、テーブルなど、多彩なラインナップをご用意しています。集中力を高めるために、お部屋の中に無垢材を取り入れてみてはいかがでしょうか。

【製品情報】
>フローリング
>パネリング
>階段/手すり
>カウンター/テーブル

【参考文献】
1. 株式会社イード.“テレワークに関する調査(1)″
https://u-site.jp/survey/telework-1
2.矢野雅彦,「VDT(visual display terminals)と眼精疲労」『四国医学誌 第五十八巻 第三号』,2002,p84
3.山田正『木質環境の科学』, 海青社,1987,p.393-405. P.427-445.
4.西村三香子,伊香賀俊治,平田潤一郎,「木質内装空間が自律神経状態を介して知的生産性に及ぼす影響に関する被験者実験」『空気調和・衛星高額会大会 学術講演論文集第8巻』,2016,p.41-44
5.西村三香子,伊香賀俊治,平田潤一郎,土屋遼太,「睡眠の質と日中の知的生産性を高める住宅内装木質化率に関する被験者実験」『空気調和・衛星高額会大会 学術講演論文集第6巻』, 2015,p.265-268
6.林野庁.“木づかい運動でウッド・チェンジ″.
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/kidukai/top.html
7.林野庁. “クリーンウッド法の概要″
https://www.rinya.maff.go.jp/j/riyou/goho/summary/summary.html
8.WWF. “森を守るマーク 森林認証制度 FSCⓇについて″